ハニー★カム:日誌

ぱちりとした写真やのんびりまったりその日の一言

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「おさみこ大調査~~皐月の躑躅が節句を越えて~」

子供の日篇ですが、無事に正方形に刷り上がってきましたよ……!

子供の日篇です

■「おさみこ大調査~~皐月の躑躅が節句を越えて~」
A5幅正方形(148×148ミリ)/68P

■オサーム様と瞳子監督の、子供の日と母の日の話。

■本文サンプルは、続きよりどうぞ。








~「おさみこ大調査~~皐月の躑躅が節句を越えて~」1話より~

 傍にいたなら、幾年月。
 伸びたその背も、途方がなくて。
 感謝の気持ちが、溢れたのなら。
 人格を重んじ、幸福はかれ。

【皐月流にも、サバイバル】

 感謝はしてもし切れない、それは極々至極当然だ、と砂木沼治は思考していた。

 然し、だが然し、である、とそれはそれは真剣に真摯に脳内で回転するのは、それを認める訳には行かん、断固拒否である、とそればかりだ。
 世界にも日本にも宇宙にも稲妻町にも、平等に同様にもう五月はやって来たと言うのに私は偉く不機嫌で、ここ吉良邸から稲妻町前駅へと繋がっている煉瓦の舗道には藤の花もつつじも満開で、桜は散って新芽で緑の葉だった。
 ゴールデンウイークの雷門の空は無意味にご機嫌で快晴で、こんなにも清々しくて美しい初夏の日差しを届けているのに、この胸中は少しだけ無駄な論理を展開しているのではなかろうか、とも感じられる。
 然し、否である、とどうしてなのだか、常日頃よりも随分と否定的な接続詞ばかりが私の心にはプカリ、と浮かんではこれっぽっちも消え失せないので、それが現実であり事実であり真実である以上は仕方がないのだろう、と頬が歪んだ。
 吉良邸の正門と煉瓦の舗道を挟んでいる車道脇のガードレールに腰掛けては、ガクン、と顎を思い切り傾けてしまったら、雷門の空が大層くっきりとはっきりとした青さで私の視界の中に存在をする。
 眩しいな、と僅かに目を細めては初夏の陽光を見上げれば、この歪んだ頬にも柔らかい、加えて厳しさを増して来た温度が落下して来るので、ああ、平等だ、と一つを頷いた。
 そうだ、不平等ばかりな世界ではあるけれど、この程度は等しく与えられるのが正しくも正義、と多分に可笑しな理論を訴えたくて堪らないらしい私は、どうにもこうにも宇宙に辟易としているらしい。
 ストン、と座り込んでいるガードレールとそれに接している煉瓦の舗道の上空には綺麗な藤色の連なりがあって、ほのかに甘い香りに元地球外生命体だけではなく蜜蜂さえも引き寄せた。
 シャラン、と透明な音が鳴り出しそうに小さな花弁を寄せてはその花の形を作り出している藤は、簡易的に設置されているダークブラウンの色をした鉄骨の棚に巻き付いたりその身を寄せたりしては、雷門の空の下に鎮座する。

 それぞれが一車線の車道の向こう側には、これまた甘い香りのしていそうな花弁も開いていた。

 もしや、あれは花弁ではなく顎が進化した物であろうか、と微かに首を傾げながらも、それが花弁であろうが顎の広がった形であろうが私には何の影響も及ぼさないので、ふむ、と砂木沼治は目線をそのままにする。
 なかなかに鮮やかな濃いピンク色や白色や、白色に薄いピンク色の模様が混ざっているつつじは低木で、藤の花の様に見上げる動作も所作も必要がなかった。
 あれは、花を茎から切り離して取り上げてしまって顎の部分から吸うと甘い味がするのだ、ととんでもなく目を細めては車道向こうの反対側の煉瓦の歩道沿いに咲いている花を斜めに見やる私は、特別格別腹が減っている訳ではない。
 昼食は済んだばかりだ、と何とはなしにうんざりとした胸中が閃いてしまうのは、この身が延々と同じ事柄で事象ばかりをグルグル、と脳内で回転させているからだろう、と腑に落ちた。
 やれやれだな、ととてつもなく重苦しい心臓と肺とを抱えたままに頭上の蜜蜂を懸念しながら、対向車線向こうの舗道のつつじの花弁を睨んでいる私にも、一つ位は選択肢が残されていても良い筈だ。
 世界の全てが決定された事項であるだなどと、何たる不条理で嘆かわしい結実であろうか、と胸の手前で両腕を組んでしまい、むむむむ、と軽くでもなく唸ってしまったのなら、真夏へとまっしぐらに走り出しそうな青空がキシリ、と胸に突き刺さる。
 ああ、この身は誓って決して悲劇の主人公ではない筈であるのに、これ程までの苦悩と落胆を抱き締めなければならないのはなぜだろうか、とほとほとの不可思議級の謎を瞼の裏に張り付けた。
 いや、特別格別、喜劇の主役に抜擢されたい訳でもないのだが、とどうやら恐ろしくも可笑しな主張を繰り返してしまいそうな私は、断言しているそれに対して、幾ばくかの揺らぎも存在するのだ、と自らを知る。
 世の中は既知ばかりではないのだな、とはああ、と大仰で大袈裟な息を吐き出してしまえば、あら、だからこそ面白いのじゃあないのかしら、と首を傾げた彼女の姿も瞼の裏で蘇った。
 吉良瞳子の弁が只の一つかて迷った音階を鳴らさないので、ああ、瞳子監督は勉強家ですね、と声にした私の科白こそが、まるで皮肉とそっくりそのままに空気と宙を伝ってしまう。
 そうじゃあなくて、と僅かに困惑した彼女がコンマ数秒のみ言葉を探して見せて、あのね、知っていることばかりだと、いつの日か世界に退屈してしまうのじゃあないかしら、そう思ったの、とその横顔は音にした。
 冷静で聡明で賢者の説だ、と当時の私は彼女を評した物だったけれど、それは今日のこの日も変わりはなかったから、ああ、瞳子監督、私はですね。

 ヒョイ、と唐突に突然に貴女に顔を覗き込まれて、真逆の世界で男は頬を歪めるしかないんですよ。

 ***

「ねえ、何をしているの?」
「ひ、瞳子監督」
「ただ今」
「お、お帰りなさい」
「ああ、そうね、宇宙船が吉良邸前にまで迎えに来るのを待っていたりするのかしら」
「誰が宇宙人ですか」
「砂木沼君」
「あのですね、半年前のそれは自称でしたし、そろそろ忘れて貰っても構いやしませんよ」
「あら、そんな風に言うの?」
「何がですか」
「だって」
「だって、何ですか」
 簡単に安易に忘れられやしないし、絶対に忘れては行けないことだとも思うし、それに、忘れたい程嫌なことばかりでもなかったわよ、良いこともあったし、と淡々と言葉を連ねる彼女の表情は曇ってはおらずに、それでも冷淡にでもなく厳しくもなく、結実を綴る。
 だって、砂木沼君にも会えたし、と素っ気ない口調で発する彼女のそれが信じられなかったので、ヒョイ、とどうしてなのだか吉良邸の正門が面している舗道と接している車道から元地球外生命体を名乗った体躯を覗き込んだ彼女に戦慄した。
 少しだけ面白そうに柔らかく頬を持ち上げる吉良瞳子を顎を傾けたままの視界で見返せば、サラリ、と彼女の青くて長い髪が初夏の風に揺れたのか私の視界の中でも逆さになって動作する。
 余り言われ慣れていない科白を耳にしたので硬直しそうになってしまったら、ポイ、とまるで放り出す様に私の口先にその花を差し込む彼女の指先があっと言う間に拡大されて、ついぞ縮小されて雷門の空の下で踊るのだ。

「美味しい?」
「が」
「甘い?」
「な」
「どうかしら」
「あ」
「懐かしい味がしたりする?」
「え」
「ねえ、砂木沼君」
「は、はい」
 私に何か言いたいことでもある? とさり気ない風を装っている彼女を真っ直ぐに見上げてしまえば、何だかね、最近ちょっとだけ睨まれている気がしたから、と吉良瞳子は科白を続けた。
 気に入らないこととか文句を付けたいこととか、別に何でもいいわよ、遠慮しなくても、と音を続ける彼女の髪はサラリ、と揺れては逆さになって砂木沼治を見据えたままになる。
 ぐ、と言いたい事の一つも音には出来ずに唇を噛み締めてしまえば、ギュッ、と噛み締めた花弁が柔らかくひしゃげてほんのりと甘い香りも漂った。
 別段、遠慮をしているつもりはありません、と嘘偽りではない胸中を告白してしまったら、己が言い淀んでいるのが無遠慮な感想で感情で感慨ではない様な気持ちになってしまい、喉の奥が苦しくなる。
 そうではなくて、と自らの内部と向き合っている私は、キシリ、と軋んでいる内臓で口先の花弁を吹き出しそうにくわえたままで、ああ、何をしているのだろうか、と確かに宇宙に向かって走り出しそうな摩訶不思議はこの掌にあった。

 ふうん、と首を傾げた彼女が私の口からつつじを持ち上げて、ヒョイ、とそれに口付けて見せるので、が、と私の頬は歪んだけれど。

(ああ、やっぱり子供の頃と同じ味がするのね、と彼女は屈託がなかったのだ)

~以下、「おさみこ大調査」に続く~



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