ハニー★カム:日誌

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「おさみこミニクリーズ~三種の神器は三種の仁義~」

ミニクリーズ篇

■「OSAMIKO MINICREASE~三種の神器は三種の仁義~」
A5/56P
表紙イラスト:【MATHEMATICA】 西野ムギ様

■大人組。瞳子さんがどうして眼鏡になるのか、という話。

■本文サンプルは、続きよりどうぞ。








~「おさみこミニクリーズ」1話より~

【暗中模索アローズ】

 航空機ならば、滑走路。
 豪華客船、航路を敷いて。
 強いて言うなら、道筋一つ。
 答えはあるのか、掌の中。

 何だか、最近微妙に避けられている気がする、と彼女を視界の端に映した。

 単なる懸念で余計な心配で、気のせいだろうか、と僅かに目を細め、サラリ、と青い長い髪が微かな内巻きで彼女の肩に零れれば、一見、吉良瞳子の外見に常日頃との差異はない。
 この身が、漆黒と白色で完成している球体を用いて世界を征服しにやって来た地球外生命体だ、と現在とは異なる砂のそれを名乗っていた十年前と比較すると、多少なりとも短くなった彼女の髪は梳かれて軽くなり、柔らかく吉良邸の和室に存在をした。
 砂木沼治は、知らぬ内に何らかの失態を仕出かしてしまったのだろうか、とうとう呆れられたのだろうか、それとも、と、スーツのネクタイを締めて朝食の席に着く。
 刹那、ピキリ、とでも音がしそうに彼女が数ミリ程眉間に眉を寄せるので、何だろうか、と吉良邸の和室の天井の真下に鎮座しているテーブルの皿と茶碗に目線を投げた。
 サンドイッチを好んでいる彼女としては、偶には朝食は洋食が良い、パンが良かった、とでも言う気分で私の斜め前の席に座しているのだろうか、と彼女曰く、ブラックの波に似ているらしいうねうねとした髪を肩に被せては首を傾げる。
 中学生や高校生位の年頃が、面倒だ、時間がない、とこの席を放棄しそうになるのは良くある話ではあるが、ここ吉良邸では古来よりそれは誓って決して許されなかった。
 あのねえ、朝食はきちんと食べなさい、と腰に腕を置いて一言で断言をする彼女は、放って置けば結構な所で昼食はサンドイッチで済ませていたのだが、言葉の通りに朝食では立派にその箸を動かすのだ。
 食べられる量は人それぞれだし、今朝は余り入らない、なんて日もあるとは思うから、一口でも良いのよ、でも、空っぽは駄目、とピシャリ、と世界と日本と宇宙と稲妻町を両断する彼女は、美しくもひたすらに正義だった。
 元気だったら食べて、それにね、朝に食べていなくて調子が悪くないのなら、昼にはすっかりとしっかりとお腹が空いていて、そりゃあもう大層な量で帳尻を合わせようとすると思うわ、そこで朝食の大切さを思い知るのよ、と彼女はクスリ、と笑う。

 朝食を一口も食べられないのは、余程具合が悪いのだろうから、登校も外出も禁止、と彼女は公言した。

 大丈夫よ、体調を見ながら、その日の分の勉強は私が教えるから、と笑って見せる彼女はそりゃあもう嬉々としていて、ああ、昔から我流だったな、と砂木沼治は十年程前の過去を回想する。
 第一ねえ、きちんと睡眠を取った朝から具合が悪い日に無理をしても良いことはないわよ、とそれはそれは淡々と科白を綴る彼女は、恐ろしくも現実で事実で真実を述べていた。
 まあ、夜更かしをしていて余り睡眠を取っていない日もある体躯の弁であるのが、少しだけ滑稽で可笑しくて、少しだけ素直には頷けない部分だったろうか、と吹き出しそうになり、喉の奥で一瞬だけ笑う。
 クッ、ととんでもなく小さい音階を聞き逃しはしなかったのか、チラリ、ととてつもなく僅かに私に視線を動かした彼女が、フイ、と顔の向きを変えてしまって加えて瞼を伏せてしまった。
 モグモグ、と目を閉じたままに顎を動かしている彼女は、特別格別不機嫌そうな顔はしておらずに、但し、日常的に、ああ、今朝も美味しいわね、と自然に綻ぶ頬はいずこかへと消え失せている。
 女性特有の、月に一度の体調変化で本来の調子ではないのだろうか、と思考しながらも、どうやら余り周期の誤差が生まれないらしい彼女のそれは、前回は一ヶ月程前ではなくもっと以前であった記憶があるので、はてさて、と男は首を傾げた。
 唐突に突然にとある予想で予測で推測をしてしまい、ガチャン、と茶碗と箸を取り落としてしまったら、吉良邸の和室のダークブラウンのテーブルの真上で、クルリ、と倒れた椀が転がるのだ。
 まさか、と吉良瞳子を凝視してしまったら、行儀が悪いわよ、砂木沼君、と偉く淡々と言葉にする彼女が酷くうんざりとした唇で呟くので、普段から、吉良邸の厨房でつまみ食いをしているのはどこの誰でしたかね、と問えなくなった。
 はあ、済みません、とぎこちない右手で茶碗を取り上げて彼女をジッ、と見据えても、彼女の光彩はこれっぽっちも慌てる事がないので、無駄な期待をして忙しなく心を動かしているのが男のみだ、と知る。
 別段そう言う訳でもないのか、と心底訝しく彼女を見詰めてしまう体躯に対して、貴女が大層悔しそうに目線を投げるので、ああ、瞳子さん、と。

 もしや、親の敵か何かでしたかね、とその瞳が睨んでいるらしい私の茶碗に首を傾げそうなんですよ。

 ***

「…………」
「…………」
「瞳子さん、つかぬ事を訊いても良いですか」
「駄目」
「…………」
「…………」
「はい?」
「だって、砂木沼君の『つかぬ事』って、失礼なことばかりなんだもの」
「…………」
「…………」
「はあ、済みません」
「いいえ」
「…………」
「…………」
「それでは、瞳子さん」
「嫌」
「…………」
「…………」
「まだ、何も言っていませんがね」
「だって、砂木沼の『それでは』って、単に言い換えるだけで、いつも質問は同じじゃない」
「…………」
「…………」
「はあ、良く分かりますね、愛ですか」
「いいえ、慣れただけよ」
「…………」
「…………」
「瞳子さん」
「何?」
「…………」
「…………」
 妊娠したんですか、と多分に朝食の席には不似合いな言葉を吉良邸の和室に小声でもなく発してしまったら、ガチャンガチャン、と同じテーブルに付いている面々の手元から茶碗や箸が落下した。
 あのねえ、寝言を言いたいのなら、眠いのなら布団に戻ったら良いと思うわ、砂木沼君の部屋、和室を出て廊下を真っ直ぐよ、ととんでもなく釣れない返答ばかりが和室の宙に浮かぶので、やはり違うか、と私は目を細める。
 回避確率が百パーセントではないにしろ、避妊もしているしな、と胸の手前で両腕を組んで唸りそうになれば、砂木沼治には吉良瞳子の様子が可笑しい気がする結実が掴めないので、むむむむ、と頬も歪んだ。
 和室のテーブルで動揺している面々の慌て様にはこれっぽっちも興味がないのか、全くもう、と言わんばかりに軽くて小さな息を吐き出した彼女は、これと言って泣き出しそうでも世界を悲観している訳でもなさそうに見えた。
 一つだって涙しない横顔は怒り出すつもりも笑い出すつもりもなさそうだったが、只一点のみ、悔しそうにこの身を見据えている彼女の光彩がもどかしそうで、どうにもこうにもそれが気に掛かるのだ。

「…………」
「…………」
「瞳子さん」
「していないわよ」
「…………」
「…………」
「はい?」
「妊娠」
「…………」
「…………」
「ああ、はあ、済みません、残念ですね」
「誰が?」
「…………」
「…………」
「はい?」
「誰が、残念なのかしら」
「…………」
「…………」
「はあ、誰でしょうね」
「馬鹿馬鹿しいわ、疑うのなら、妊娠検査薬でも出す?」
「…………」
「…………」
「いや、結構です、瞳子さんはこう言った件で虚偽発言をしませんから」
「そう」
「…………」
「…………」
「はい」
「ふうん」
「…………」
「…………」
「はい」
「そうかしらね」
「…………」
「…………」
 なぜ、ここまで喧嘩腰なのだろうか、と酷く頬が歪んでしまったら、はあ、ととてつもなく切なそうな声音で軽い溜息を付いた彼女が、カチャリ、と箸をテーブルに戻して、両手を合わせては、ご馳走様でした、と声にする。
 残してごめんなさい、余り、食べられなくて、と偉く申し訳なさそうに、神妙に言葉にする彼女の椀を視界に映せば、白米が精々半分しか減っていない上におかずの皿も空っぽ所か随分とそのままであったので、伏せていた瞼を持ち上げた彼女の掌をバッ、と掴んだ。
 瞳子さん、食欲がないんですか、やはり、と常日頃は目の前の朝食を残したりする事は皆無な彼女に鋭い声を上げてしまったら、関係ないわよ、と無性に必死そうな音が降った。
 ボロ、と頬に零れた水滴に両目を見開いてしまえば、私の目の前にとんでもなく悔しそうで気恥ずかしそうな吉良瞳子が存在するので、ギクリ、と恐ろしくも鼓動が鳴る。

 ガチャンガチャンガチャン、と彼女の珍しい涙に、吉良邸の和室のテーブルには茶碗や箸が大層転がったけれど。

(彼女は、砂木沼治の掌の辺りを睨み続けては悔しそうに涙するので、摩訶不思議だった)


~以下、「おさみこミニクリーズ」に続く~



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