ハニー★カム:日誌

ぱちりとした写真やのんびりまったりその日の一言

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「おさみこのおきて~チープなレールで、テープをはって~」

カップ麺篇も、うっとりにっこりと刷り上がってきていますよ!

カップ麺篇表紙

■「おさみこのおきて~チープなレールで、テープをはって~」
A5/52P
表紙イラスト:【MATHEMATICA】 西野ムギ様
(【ハニー★カム】ファーストページよりどうぞ)

■砂木沼コーチが四畳半でカップ麺を食べる羽目になる話。

■本文サンプルは、続きよりどうぞ。




【スフィンクスなど、いなかった】~「おさみこのおきて~チープなレールで、テープをはって~」1話より~

 古代の英知と、剣と牙。
 刃向かったのは、恐怖の巨悪。
 正義の心で、立ち上がったら。
 迷宮探訪、扉を開け。

なぜ、こんな事になってしまったのだろう、と砂木沼治は真剣に真摯に思考する。

 可笑しい、記憶がない、いや、記憶はあるのだが、とズキリ、と軽い悲鳴を上げる額に大きな掌をかざしてしまえば、余りにも馬鹿馬鹿し過ぎて、これはもう、と頬が歪んだ。
 滑稽過ぎるだろう、何たる事か、と自らを判断して判定した途端にズキズキ、と偉く頭痛が起こってしまえば、はああ、と大仰で大袈裟な溜息もこの空間を席巻した。
 取り合えず、この恐怖の成分を抜かなくてはならないが、ああ、と嘆きの息を吐き出してしまったら、目の前の景色で景観に私はとんでもなく目を細めて、湯も沸かせないとはこれいかに、だ、とガクリ、と頭を垂れるのだ。
 眼下に展開している、多分に現実で事実で真実なのだろう一口コンロの設置されている場所で、胸の手前で両腕を組んで佇んでしまえば、ピシリ、と凛々しい音でも発しそうに、そうでなければとてつもなく飄々とした様相でオレンジ色のガスのチューブがグルリ、とその姿を伸ばしている。
 ブラックの円形で上部につまみが付いているそれをチューブに対して平行に回して見ても、カチチチ、とコンロのスイッチは虚しく音を鳴らした。
 閉栓されている、と眼下をとんでもなく睨んでしまい、むむむむ、と唸りを上げる私は、一体全体何をやっているのだろうか、と唐突に突然に吉良邸の三口コンロが酷く恋しくなる。
 世界と日本と宇宙と稲妻町にまるで誇る様に存在をするあの部屋は、一般的なイメージでのキッチンと呼ぶよりもずっと台所か小さな厨房と評した方が相応しく、また似つかわしく吉良邸内に位置していた。
 常日頃から整理整頓されて、ピカピカ、と美しくも磨かれているフロアは日々の使用で少しずつすり減っている様な気もするが、それは、使用する回数と頻度とその人数が多数である、と言う立派な結実であるのだろう。
 基本的に吉良邸に於いては、働かざる者食うべからず、であるので、誰一人として(得手不得手や、その完成品の良し悪しは別として)料理の出来ない者はいなかったし、また、厨房の片付けを行わない者もいないのだ。
 ああ、何と素晴らしくも厳しく美しい世界であったのだろう、と無意識で右手で握り拳を作ってしまったら、ブルブル、と微かに震えている右手の掌があの小さな厨房を欲していると知る。

 懐かしいな、と胸の表層に感想と感情と感慨とが閃いてしまえば、キシリ、と内臓が軋む如くだ。

 否、否だぞ、砂木沼治、ついぞ昨日までは、昨夜まではあの空間は私の直ぐ傍にあったではないか、と至極当然の思考回路が動き出したのなら、フラリ、と上半身が傾きそうになった。
 そうだ、先ずはこの悪魔の成分を抜かなくては、と己の思考を大層緩慢とさせており、随分と停滞させている気がする体内のそれにキッ、と睨みを効かせそうになる。
 良し、と偉く意気込んで一口コンロと水道と玄関の隣に佇んでいる扉をガチャリ、と手前に開放して見れば、湯船もシャワーも見当たらない空間に、ああ、既に確認済みではあったが、銭湯に行かなくてはならぬのか、と瞼を伏せては頬が引き釣った。
 風呂が付いていないのであれば、いっその事近場の温泉宿にでも繰り出したら良い、と言う神の掲示だろうか、とこれと言って特別格別信じてはいないその存在を思ってしまえば、うむ、砂木沼治がこの様な状況下に置かれている時点で、それはいないのであろう、と一つを頷く。
 やれやれ、ととんでもなく歪んだままの頬を顔面に張り付けたままに、そうだ、と袖が短く赤いジャケットのポケットを探れば、クレジットカードとキャッシュカードが挟まっている財布が消え失せてはいなかったので、ああ、途端に飢え死にはないのか、と大きくて深い息を吐いた。
 何らかの超常現象や彼女の手腕で銀行口座が凍結されていなければ良いのだが、と何とはなしに懸念してしまうのは、私にとって彼女の存在と価値が大きく、それが離れてしまうと即座に恐怖の対象となるのだろうか、と自分自身が摩訶不思議だ。
 とんでもなく狭苦しい空間に存在をするのが、求めている鍋ややかんやそれに類する水を熱湯へと変化して変遷させ得る物体ではなく、しっかりときっぱりと断絶されているガスと繋がっているコンロ一つなので、はああ、と息を精製する。
 チリチリ、と僅かに数回の点滅をしながらも何とかその明るさを保っている電球が、プラリ、と低い天井からぶら下がり、その身を世界と日本と宇宙と稲妻町に晒しているので、今時、裸電球はなかろうに、と益々この頬は歪んで行った。
 まあ、どうやら電気は通っている様だから凍死はないのか、と思考しているこの胸中は、ガクンと傾けて見た顎の先に位置している天井が今にも落下して来そうな錯覚にフラリ、と体躯が揺れそうで。

 ああ、先ずは電気ケトルでも手に入れてから湯を沸かさなくては、と結構真剣に真摯に決意しているのだ。

 ***

「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
 こじんまりとしていると表現するよりも、寧ろギュウ、と何かしらの塊みたいな魂でも籠もっていたりはしないだろうか、と酷く懸念をしてしまう程に、荒々しい木目と薄っぺらい木材とで完成している天井に、何とはなしに気分がドン、と沈んで行く。
 飽くまでも仮定ではあるのだが、課程と過程は兎も角として、もしや悪いのは彼女ではなく砂木沼治だったのだろうか、と伏せた瞼で延々と熟考してしまっても、否、否だ、誓って決して私は可笑しな事は主張していない筈だ、私は仁義に乗っ取って正義をかざしただけなのだ、と握った右拳がどうにもこうにも力がないので、はああ、と深い息を吐き出した。
 この冬一番の最低気温を叩き出した、と昨夜のニュースで報じられた一月下旬の稲妻町は、しんしんと冷え込んでは夜半ともなればとんでもなく気温を低下させる。
 吉良邸に於いても、昨夜もかなり寒かったのだから多少なりとも不味いかも知れぬ、ととんでもなく薄いのだろう天井を目を細めて睨んでしまえば、ライトブラウンでそれはそれは美しい木目をしていた吉良邸の和室の天井を思い出した。
 常日頃から傍にあった物だから、それがまるで永久に続くのだと酷い勘違いと思い込みをしていたのだろうか、とキシリ、と内臓の一つが軋んでしまえば、この身があの和室も愛していたのに気が付くのだ。

「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
 傍になくなってしまってから、ひしひしとその大切さと大事さと希少加減が身に沁みる私は、現実として事実として真実として、自らの発言に後悔はしてはいなかったけれど、然し、反省はしなくてはならないのかも知れない。
 いや、然しだな、と昨夜の砂木沼治の主張は、特別格別不合理でも不自然でも不義理でもなく、偉く理にかなった物であった筈だ、と再度の確認をしてしまえば、それが己の中身だけであるのだとはた、とした。
 彼女の主張も、吉良瞳子の正義であったのだろうか、とむむむむ、と低く唸ってしまえば、キシリ、と音を立てそうなのが私の内臓ばかりではなく、砂木沼治の佇んでいる四畳半の室内の壁であるのだと知る。
 もしや、取り壊し寸前であるのだろうか、とザラザラ、とした表面にブツブツとした小さな突起のあるオリーブグリーンのそれを凝視してしまえば、今時砂壁はないだろうに、ととんでもなく頬が歪んだ。
 例え名字に砂の字が付いていたとしても、別段私はこの砂壁のザラザラとした具合を愛せそうにはなかったので、握り拳を振り下ろしたのなら、いとも安易に陥没するか穴が開きそうな壁面に辟易とした。
 ピタリ、と触れて見たその表面が恐ろしくも静かに沈黙を保ちながら、砂木沼治の掌に無骨で無機質な感触を与えて来るので、私は柔らかくて温かい彼女の腕が恋しくなるのだ。

「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
 そうだ、とレッドのジャケットのポケットに現存していた携帯を掌に掬い上げて見れば、至極当然の如くにすっかりとしっかりと電池が切れているので、やれやれ、充電器など持っていないぞ、と瞼を伏せた。
 真っ黒な画面で静かに私を見上げている薄っぺらい電子機器は、文明の利器ではなかったろうか、とほとほと落胆の息を繰り返して生産してはそれを睨む私には、彼女からの着信があったのかどうかを知る術がない。
 まあ、後で携帯電話のショップに行けば良いのか、と思い切り目を細めてしまったら、この心臓と肺とが吉良瞳子からの着信や留守電に対する伝言や、或いは電子メールでの意思表示を期待しているらしい、と明確になったので、情けない胸中が込み上げた。
 では、敢えて行くまい、と携帯電話のショップには別れを告げる気持ちで一杯に目線を引き締めてしまえば、もしや、これっぽっちも彼女からのアクションがなかった際の絶望を避けているのだろうか、と自らを訝しむ。
 そんな勇気のない男ではないぞ、ととんでもなく可笑しな思考回路が働いてしまったのなら、クスリ、と今にも吹き出しそうに笑む彼女の姿が瞼の裏に浮かんだので、グッ、と私は拳を握って。

 引きませんよ、ときっかりとはっきりと吉良邸からは逃げ出してしまった体躯で一人、宣言をするのだ。

(ガタ付いているアルミのサッシを力任せに横に滑らせて見上げても、夜空に一つの星も見えなかった)

~以下、「おさみこのおきて~チープなレールで、テープをはって~」に続く~








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